私は2020年2月から英語の音読トレーニングを続けています。
きっかけは英語上達完全マップを読み、効果的だと書いてあったから。
音読トレーニングを始めて半年ほど経ってからTOEICを受験したところ、今までより確かな手応えを感じることができました。
当時はTOEIC450点でしたが610点までスコアアップしました。
その手応えから、音読トレーニングを続けることの有効性を確信したので継続しています。
しかし、音読がどのような理屈で効果的なのかは、全く分かっていなかったのです。
そのため、どんな意味があるのか、なんの役に立っているのか、という疑問は常に付きまとっていました。
そんな時に「音読で外国語が話せるようになる科学」という本が目に止まり、今回読んでみた次第です。
本書の著者は関西学院大学の教授であり、外国語、特に英語学習のメカニズムを研究されている方です。
本書ではそもそも外国語学習において、必要な要素は何であるかを説明した上で、音読が効果的である理由が書かれていました。
その点において私に取って有益な本となりました。
そして私のように働きつつ家庭の役割を果たしながら、限られた時間の中で効率的に学習するには適した方法であったことがわかりました。
「音読で外国語が話せるようになる科学」の要点をまとめることで自分の糧としつつ、効率的な英語学習方法をお探しの方の参考になれば幸いです。
言語学習に必要な要素
まず著者は言語学習、特に話せるようになるために必要な要素として以下の4つの要素を挙げています。
言語学習に必要な4要素
- インプット処理…特にlisteningにを主とした大量のインプット。
- アウトプット産出…インプットだけでなく、話す、書く、会話するなどのアウトプット。
- プラクティス…インプットとアウトプットを繋ぐ、練習(シャドーイング・音読)による自動化。
- モニタリング(メタ認知)…自分自身の状況を観察して調整するメタ認知活動
この4つのなかで興味深いのは、メタ認知活動が学習上大切であるという点でしょう。
例えば音読ならば、それが何を目的とした、どのような活動で、その結果どのように外国語能力の育成に役立つか、についての正確な知識を持つことも欠かせないことであるのです。
そしてその学習中も、自分がどのような状態であるかを認知する視点をもつことで、学習効果は高まるというのは印象的でした。
音読とはなにか
「音読とはなにか」なんて、あらためて説明する必要はないかもしれません。
たしかにその通りなのですが、本書では以下のような定義がなされていました。
音読とは、書かれた単語や文、文章などの「書き言葉」を、音声言語すなわち「話し言葉」に置き換えて発音するタスク。(本書p.10)
やや抽象的ですが、この音読の定義が重要だったりします。
この「書き言葉」を「話し言葉」として発語することは、音読が英語学習をするうえで重要であるという理由となります。
なぜ音読なのか
ではなぜ音読が英語学習に効果があるのでしょうか。
一般的な日本人が英語を話せるようになろうとした時に、立ちはだかる大きな障害の一つとして以下が挙げられます。
「書き言葉」と「話し言葉」の双方向の処理が一体化されていない。
どういう事かというと、
ココがポイント
「音として耳から聞いたモノ」と「文字として目で見たモノ」が脳内で一致しないことが、問題となるのです。
さらに説明を加えます。
日本語と英語では、言葉のルールや発語の仕方が異なります。
例えば日本語の場合、母音と子音が組み合わさっていることがほとんどです。
【アップル】 ⇒ 【アッ・プ・ル】 ⇒ 【ap・pu・ru】
一方で英語は、子音が連なっていても問題ありません。
【apple】 ⇒ 【ǽpl】
この違いは重要で、次の点において問題となります。
ココに注意
日本人は子音の後に母音をつけてイメージしてしまいやすい。
そのため、例えば【apple】と文字で視認するのと、【ǽpl】という音を耳で認識する時に、頭の中で同じものとして認識できないという状況が生まれてしまいます。
- 理解A:音で聞いて、頭の中で再現される音と、それからイメージされるモノ
- 理解B:目で見て、頭の中で再現される音と、それからイメージされるモノ
上記の「理解A」と「理解B」は、「音として耳から聞いたモノ」と「文字として目で見たモノ」それぞれが異なっていることを表しています。
この聴覚と視覚でそれぞれ同じ意味のモノを認知しているにも関わらず、脳内でそれを一致させることができない、ということが日本人英語学習者の最大の問題となります。
これを解決するためのもっとも適した方法が「音読」という訳です。
音読の方法
さて、それを踏まえてどのように音読するのか、ということが疑問に浮かぶと思います。
本書では効果的な音読の方法を、まるまる1章分使って説明されていました。
その中で意識した方が良いモノをたった1つに集約するならば、以下の通りです。
ココがポイント
リスニングを行った後、一度止めて間をおいてから音読する
なぜ間をとる必要があるのか、リスニングしながらリーディングを同時並行で行ってはいけないのでしょうか?
著者は、同時に行った場合聞く余裕がなくなり、ほとんど聞いていないと述べています。
そのため、音読をする場合には
step
1英文を聞き
step
2いったん間をおいて
step
3音読する
という3ステップで行うことがもっとも効果的であるとしています。
これにより、音で聞いた情報と文字で見た情報を一致させながら、学習をすすめることができるのです。
音読とシャドーイング
上記のような音読とシャドーイングは、似たような学習方法ですが何が異なるのでしょう。
共通点
どちらの方法も、1度に4つの処理を同時に行っているという点で共通しています。
またその処理過程も4つのうち3つは共通しています。
その過程は以下の通りです。
共通しているのは、
共通点
②文法・意味処理 ⇒ ①で得られた情報を意味として理解する。
③発声 ⇒ ②を理解したうえで発声する。
④聴覚フィードバック ⇒ 発声したものを自分で聞いてチェックする。
この様に、英語を認識する方法が異なること以外は、ほとんど一緒です。
そして、この4つの処理を同時に行っていることこそが学習に有効な理由です。
ココがポイント
複数処理を同時に行うことが、実際のコミュニケーションに必要な同時性を獲得する。
人は、会話の際に多くの処理を無意識的に脳内で同時に行っています。
音読やシャドーイングでは、その状況に近いため、英語を使ったコミュニケーション手段を獲得するのに有効な方法であるのです。
相違点
次に異なる点を挙げていきます。
上記は先ほどの図と同じものですが、シャドーイングと音読で①の部分がまったく異なります。
シャドーイングは、音を耳で聞いています。
一方の音読は、目で見た文字を、音の情報に変換して認識します。
この認識が異なるのことが大きな違いです。
そして日本人が英語を学ぶうえで、文字情報を音情報に変換する過程でエラーが起こりやすいのは説明した通りです。
そのために音読の際には、リスニング後に間を置いたうえで、それぞれを一致させる時間を作ることが必要なのでした。
プラクティス効果
英語学習をするうえで、様々な研究が音読の有効性を示しています。
その効果としては、以下の項目が挙げられていました。
英語学習上の音読の効果
- リーディングの読み速度向上
- リスニング力強化
- 語彙・構文力強化
- 表現力強化
- ライティング力強化
- レディネスの効果
そして取り組み方としては、集中して行うよりも分散して継続する方が効果的であるとのことです。
つまり例えば1日×4時間×2日行うよりも
1日×2時間×4日行った方が効果が高いとのこと。
レディネスの効果
さて上で挙げた音読の効果の中に「レディネスの効果」というものがありました。
これはどういった意味でしょう。
レディネス(readiness)とは、学習をするための心身の準備状態を指す心理学用語です。
教育分野では、主に子供の心身の機能が知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整った状態のことを指します。(参照)
簡単に調べたところ上記の様にありました。
少し分かりにくいのですが、学習するうえでの心構えなどが整うということかと思います。
音読を行ったうえで、さらに文法学習をすると、より学習効果が高まるということの様です。
私自身の体験から述べると、以下のような状態になったことも音読によるレディネスの効果なのかもしれません。
- TOEIC試験で大量の英文を前にしてもプレッシャーがかからなくなった。
- TOEIC試験後も以前ほど疲労を感じなくなった。
個人的に音読して効果があった点
2020年2月から英語学習を再開して、私は主に音読を主として取り組んできました。
個人的に音読の成果が実感できたのは以下の項目です。
個人的音読効果
- シャドーイング力向上…音読したものは、シャドーイングも円滑になります。
- リスニング力…今までは虫食いで聞こえましたが、まとまった文章として聞き取れるようになってきました。
- リーディングスピードアップ…音読を「早く終わらせたい!」という気持ちも合わさって、英文を読む速度が上がりました。
あくまで主観ですが、本の記述の通りかと思います。
おすすめ音読教材
本書では、音読するうえでおススメの教材が挙げられていたので、幾つか列挙したいと思います。
おススメ音読教材 全般レベル(初級~上級)
上記の他にも、入門・初級・中級とそれぞれ参考書が挙げられていました。
私は、英語完全上達マップの考え方をもとに学習をすすめているので、みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング(CD BOOK)を最初に手にとりました。
付属のCDもリスニングの後にポーズがついているので、本書で解説されている通りに音読するには良いと思います。
その後は、英会話・ぜったい・音読 【挑戦編】—英語の上級回路を作る本を行っていました。
このシリーズは入門編、標準編、挑戦編があり、それぞれ続編があるので、入門編から順に初めても取り組みがいがあると思います。
まとめ
本書を読んで、個人的には音読の効果が実感でき納得できる部分と、まだ自覚できない効果もありました。
私は、リスニングしながら音読していたので、方法自体が正式なものでなかったからかもしれません。
とは言え、音読自体が効果的であることは、本書により確信を強めることができました。
今後も取り組み方次第で、向上の余地があることがわかりましたし、なにより音読の効果を知ることで、私自身のメタ認知力も向上したかもしれません。
私のように英語学習に多くの時間を割けないという方にとっては、さまざまな学習効果がある音読トレーニングをすることは有効性が高いと言えるでしょう。
これからも着実に継続していこうと思います。
以上、英語学習に音読を取り入れることを検討されている方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。