私が今回読んだ「売れる会社のすごい仕組み」は、そんな想いを抱いている方にとても役に立つのではないかと思います。
本書は、以前読んだ「ドリルを売るなら穴を売れ」の続編的な内容でもあります。
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著者である佐藤義典さんは、MBAを取得されており、自身でコンサルティング会社を経営されている方です。
マーケティングの専門家であるにもかかわらず、本書ではその理論を文章はもちろん、図解もされており、素人でも分かりやすい内容となっています。
特に理論がフローチャートで表現されているため、その順番で考えをまとめていくと、初心者であっても体系的に考え、具体的な行動に移せるようになっています。
そして何より読み物としてのおもしろさもある。
「ドリルを売るなら穴を売れ」の続編的な内容ですが、「売れる会社のすごい仕組み」だけ読んでも楽しむことができるでしょう。
本記事では私の学びを深めるためにも、「売れる会社のすごい仕組み」を要約したいと思います。
「マーケティングを学びたい、けど何から始めたらいいかわからない」
そんな方の参考になれば幸いです。
売れる会社のすごい仕組みのおススメポイント
まず最初にこの本がおススメできるポイントを解説します。
著者自身も述べていますが、本書は以下の2点で優れています。
ココがポイント
- 売れる仕組みを体系化している
- 物語を通じて疑似体験できる。
売れる仕組みを体系化している
本書はマーケティングの考え方を4つのツールに落とし込んでおり、しかもその全てが関連性をもって体系化されています。
4つのツール
- 戦略BASiCS
- 売上5原則
- マインドフロー
- プロダクトフロー
このツールを使いこなすフローチャートも示されているので、私のようなマーケティング素人であったとしても、網羅的に考えることができます。
しかも考えが具体的になるようにされているため、抜け落ちていた視点を認識することもできますし、現実的に実践できるようになっています。
本記事では、この4つのツールを後述します。
物語を通じて疑似体験できる
前作同様に、マーケティング理論を解説するパートとそれに応じた物語形式がとられています。
物語形式である利点は以下の二つです。
ココがポイント
- 抽象的な理論を、具体的な物語で補完することで理解を深めることができる。
- 物語を通じて主人公の思考過程をたどりながら学ぶことができる。
これは以前私が読んだ本にあった、「具体と抽象の往復運動」を本書を通じて行うことができ、自身の思考力を高めつつ読み進められます。
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以上がこの本の差別化ポイントで、おススメできる理由です。
戦略BASiCS
続いて著者が提案するツールに関して解説します。
戦略BASiCSとは何か
戦略BASiCSとは、マーケティング戦略全体を5つの要素に著者が集約したものです。
戦略BASiCSの5つの要素
- Battle field(戦場・競合)
- Asset(独自資源)
- Strength(強み・差別化)
- Customer(顧客ターゲット)
- Selling message(メッセージ)
詳細は以下。
Battle field(戦場・競合)
マーケティングにおいて、戦場も競合も顧客が決めるとされています。
その業種や業態より価値が戦場となると。
例えばマクドナルドの競合といえば、ロッテリアなどの店が浮かぶかと思います。
しかし「手早く食事がしたいという需要」においては吉野家・コンビニなども競合となります。
また「小さな子供を連れて食事をしたいという需要」においては、ファミレスも競合となります。
つまり顧客が何を求めているかによって、戦場・競合は決まるのです。
Asset(独自資源)
Assetとは以下に説明する強みや差別化を長期的に可能にする強みの源泉のことを指します。
次のStrengthとセットにして考えることが必要になります。
Strength(強み・差別化)
Strength は商品などの強みであったり、他と比較した時の差別化ポイントのことです。
顧客にとっての目に見える、分かりやすい価値のことを指します。
そして競合との相対的な比較のなかで、強くも弱くなりえるので、競合を知ることが重要となります。
つまりBattle field(競合)を知った上で、何がStrength(強み)となるかを、Asset(独自資源)とすり合せしつつ考える必要があるのです。
Customer(顧客ターゲット)
戦略をたてるときの中核となるのが、Customerである顧客をどの様に捉えるかです。
上述したBattele fieldはお客によって決まりますし、その中でのStrengthも変わってきます。
ですのでCustomerが求める価値がなんであるかを明確に捉えることが必要になると思います。
Selling message(メッセージ)
最後に、これまでの戦術や強みをお客に対してどのように伝えるかが重要になります。
例えば以前、Apple社のメッセージのひとつに「Think different」というものがありました。
このキャッチコピーにはApple社の、既成概念や固定観念とは異なるモノを産み出そうという気概や、製品に込めた想いを伝えるメッセージが込められていたと言えるでしょう。
この様にターゲットであるお客の求めている価値に対して、自分たちの強みを訴えることができるメッセージを伝わるように発信することが必要となります。
「戦略CBASS」?
以上が、「戦略BASiCS」に関する個別的な説明でした。
おそらくBASiCSの方が語呂合わせとして耳なじみが良いのでしょうが、実際には順番が異なるように思われます。
考え方の基本的な順は以下の様ではないでしょうか。
step
1Customer
step
2Battle field
step
3Asset
step
4Strength
step
5Selling message
お客が何を求めているのが、その価値をしっかり見極めたうえで戦略を立てることが必要なのだと思います。
3つの差別化軸
いずれにせよ上記をそれぞれ考える上で、著者は一貫性と具体性が大切であることを繰り返し述べています。
一貫性を持って考える際に、基準となりえる3つの軸を提案しており、それが以下の3つです。
- 手軽軸…早い・安い・便利
- 商品軸…高品質・新技術
- 密着軸…お客の個別ニーズに対応する。
戦略を考える過程で、自分たちの「独自資源」に由来する「強み・差別化」を検討するさいに、上記の軸を何にするかで行動が異なってきます。
顧客がこうした軸を基準に商品を選ぶとしたら、以下のような考えになるでしょう。
- 手軽軸…とりあえず最低限
- 商品軸…良いモノは高い
- 密着軸…自分のこだわり
この様に顧客の思考に沿った差別化軸を検討していく必要があります。
なぜ戦略BASiCSを使うのか
売上を向上させるには、なんらかの対策が必要です。
もし戦略が無かったとしたら、対策の方法には一貫性がなくなってしまいます。
一貫性のない対策でも、もしかしたら売上は増加するかもしれません。
しかし対策に一貫性があった方がより売上は増す可能性は高くなるのでは無いでしょうか。
そのために戦略をたて、その戦略に基づいた一貫性のある対策を具体的に行う必要があるのです。
売上5原則
売上5原則とは何か
戦略を立てる目的は、まず利益をあげることです。
利益とは、以下の式で単純に表すことができます。
利益=売上−費用
売上を増加させることを考えた場合、さらに以下の様に分解できます。
売上=客数×客単価
さらに分解すると
客数 = 新規顧客/既存顧客
に分けられます。
さらに客単価は
客単価 = 購買点数/商品単価/購買頻度
この様に分解することが可能です。
以上のように単純に売上と一言で表現したとしても、実際にはこの様な5つに分けることができるのです。
そのため原則として5つの数字を上げることができれば、必然的に売上を向上させることができます。
なぜ売上5原則を使うのか
売上5原則を利用するもっとも大きな理由は、戦略BASiCSに基づいた作戦で達成すべきゴールを具体的にする必要があるからです。
この5つの項目を参考に、具体的な数字を明確にすることによって、その数字を上げるための方法を考えることができます。
その数字を見ることによって、戦略が上手く機能しているのか、対策が効果的であるのかを測定することができるのです。
どのように売上5原則を使うか
5つのうち何を重視するかは、戦略と軸によって異なりますが、対策の良し悪しを定量的に評価することができます。
そして課題が出たときには、その数字の背後にある性質を定性的に評価することで、解決の糸口を探っていきます。
マインドフロー
マインドフローとは何か
モノを購入する際に、お客は比較的共通した心の動きをしたのちにファンになると言います。
その心理経過を示したものを、著者はマインドフローとしています。
なぜマインドフローを使うのか
現実的には多少の差異はあるでしょうが、大まかにマインドフローのような過程を経るのですが、この一つ一つの項目で留まってしまうと、ファンになるまでに至りません。
そのため認知から愛情まで、すべての関門を通過してもらえるように対策する必要があります。
どのようにマインドフローを使うのか
お客の心理経過を一つ一つ分別することにより、どの部分で留まっているのかを考えることができます。
それにより留まっている心理に対して、どのような施策を行えば次の過程へお客を誘導できるのか、具体的に考え、対策するようにしていきます。
(売れる会社のすごい仕組み:p151 図を改編)
一貫性を持って考える必要性
この様に戦略BASiCS・売上5原則・マインドフローといったツールを紹介しています。
それぞれが説得力があり、どれか一つを考えるだけでも効果が得られるような気がします。
しかし、著者はそれぞれを関係させつつ、一貫性をもった考え方をする必要性を説いています。
それが以下の図となります。
(売れる会社のすごい仕組み:p223 図を改編)
この様なフローチャートを埋めることで、私のようなマーケティング初心者であっても一貫性をもって、具体的かつ網羅的に対策を考えることができるようになると感じます。
そのため初心者に非常に適した本と言えるのではないでしょうか。
プロダクトフロー
著者は、上記の3つにくわえて、プロダクトフローという4つ目のツールも提案しています。
プロダクトフローとは何か
マインドフローはお客の心の流れを示したものでしたが、それに対応した商品の流れを示したものがプロダクトフローとなります。
下記のように商品を3つに分け、最終的には売りたい商品に誘導するような仕組みを考えるツールとなります。
- あげる商品
- 売れる商品
- 売りたい商品
なぜプロダクトフローを使うのか
このプロダクトフローを考えることにより、マインドフローに対して、どのような商品を提供することが適切なのかを検討することができます。
お客の心理状態に適した商品を提案することにより、お客との信頼関係を築くことができ、より愛着をもってもらえる状況を作ることができます。
どのようにプロダクトフローを使うのか
具体的には以下の図のようになります。
(売れる会社のすごい仕組み:p213 図を改編)
これにより商品の提案の仕方を考え、適した商品が無ければ、商品開発の視点までさかのぼって考えることができるでしょう。
売れる会社のすごい仕組みまとめ
私なりに「売れる会社のすごい仕組み」を要約しました。
といいますか、かなり重要なtopicsをほぼそのまま抽出した形になってしまいました。
しかし、それであってもこの本は、まだまだ読みどころがあると思います。
こうした論理部分は、実践してこそ意味があります。
本書では物語の部分に実践場面が集約されており、やはりセットで読むことで深く理解ができるのではないでしょうか。
そして、マーケティング自体がおもしろいと感じことができることでしょう。
私は本書を読んで、筆者の本をさらに読んでマーケティングのことを学びたいと思った次第です。
マーケティングに興味があるという方は、ぜひまずは本書を手にとって頂くと良いと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました。